亜里沙は『狡賢く生きる術』をこの頃、身に付けた。もう親の評価なんて諦めていた。
ただ成績表を5(5段階評価)で埋め尽くせばいい。
陸上部の専門である100メートルを学校の誰よりも早く走ればいい。
親にも先生にも文句は言わせない。言えない状況を作り上げた。
校内で飲酒・喫煙をし呼び出されても「何むきになってんの?恥ずかしくない?大の大人が…」などと友達一緒に滑稽にして楽しんでいた。
授業中もお構いなしに携帯で友達と話し、徹底的に授業の妨害を図っていた。
先生から「平常点云々」の話をされれば「マックス引いても20点でしょ。100点取れば関係ねぇじゃん」と強気の態度でいた。
補導されそうになればどんな汚い手段を使ってでも逃げ切った。
万引きもエスカレートしていった。欲しいものがあって取るわけではなかった。ストレス発散とスリルを味わうため…盗んだものは全て捨てていた。
深夜に大勢で校内に忍び込んではあらゆる物を壊した。
有名な進学塾にも籍だけ置いていた。実際に授業を受けたことはほとんどなかった。
これは表向き良い子に見せる為の道具だった。
この頃父と亜里沙の関係は完全に崩れていた。
勿論、両親は亜里沙の問題行動の一切を知らなかった。
学校側から両親に告げ口されたことは一度もなかったから。
故に父からの理由無き暴言、暴力は亜里沙の心をどんどん荒ませていった。
母は亜里沙に対する父の態度のあまりの凄さにことある毎に『お金』を渡してくるようになった。
仲裁に入るのでなく、ことが終わってから「あんなクソおやじの稼いだ金あんた好きに使いな」と。
家族の愛情を微塵も感じなくなったのは恐らくこの時期からだと思う。
読んだ
HP Bizarre Inclination ARISA